5.2 想像力は時空を超える

「こんにちは! 今日の講義もケビンが担当です! みんな久しぶり! 暑い日が続くけど夏バテしてない? 今日の内容は『想像力』だよ! 準備はいいかい? よし、行ってみよう!」

今日のケビンは、最初からハイテンションだ。

「想像力……これはね、本当に大事な力だね。成功するためには欠かせない、大切なものだよ。まずは、想像力とは?という、そもそも論から行ってみようか。ではチャビー、想像力って何でしょう?

「えーっと改めて考えると難しいですね……。目に見えないことを、心の中でイメージする力でしょうかねぇ?」

「そうだね、いい線いっていると思うよ。僕はね、想像力を『自分の関心を、時空を超えて拡張する力』と捉えている。君たちも物理学の相対性理論というのを聞いたことがあるだろう? それを最初に考えた物理学者は、こう語ってるよ。『光の先頭に座ってみたら、世界はどのように見えるのだろうか?』という想像が、相対性理論を考え出すきっかけだったとね。光は、1秒間に地球を7回り半する速さで進んでいるんだけど、その先頭に座ってみたら世界はどう見えるのかなんて、そんなこと普通は考えないよね? このように想像力を持つことで、時空を超えることが出来るようになるのさ」

「君たちはテレビカメラを1台持っていて、自分の目の前に広がる風景を写している。そのテレビカメラは、自分のいる地点しか写せないし、過去や未来に行くこともできない。でもね、想像力を持っていると、もう1台テレビカメラを持つことができて、そのカメラは時空を超越できるようになるんだ!」

興奮気味でケビンはまくし立てる。

「では、なぜ想像力が大切かと言うとね、大きく2つの利点がある。1つ目は情報のアンテナが高くなること。さっきも言ったけど、想像力は自分の関心を拡張する力なんだ。興味がない事柄には想像力は働かない。だから想像力=関心の幅だと言っても過言ではないよ。みんなには、事前課題でライフイベント表を作ってもらったよね。あれ、作っててどうだった? この先のライフイベントについて、いろいろと考えて想像してみたと思うんだけど、自分の未来を想像することで、新しく見えてくるものがあったでしょ? どう? ネコ美」

「言われてみれば確かに……。キャッツアイで自分が働くことを想像するようになってからなんですけど、キャッツアイに対する批判のコメントを読むと、自分が批判されてるような気分になってきました」

「それはね、想像力を働かせて自分の関心の幅を広げたことで、今まで見過ごしてきた情報を、キャッチできるようになってきたという事だね。僕たち猫はね、無意識のうちに情報の選別をしていて、自分とは関係ない情報は入ってこないようになっているんだ。メールソフトには、迷惑メールを自動的に振り分ける機能がついているだろう? あれと同じだよ。視覚や聴覚から情報が入ってきても、自分とは関係ないと思った情報は、自動的に迷惑メールフォルダに振り分けられて捨てられる。ヨシムネは、引き寄せの法則について聞いたことがある? 自分の願いを具体的にイメージしていると、その願いが叶うという……

「僕はそういう非科学的なものは信じません」

「はっはっは、そうだったね。ただ、引き寄せの法則は、非科学的だとバッサリ切り捨てられるもんじゃない。さっきも言ったように、想像力を働かせて、関心の幅を広げると、それに関係する情報がどんどん入ってくるようになる。自分の好きな相手は、心の中で何を考えているのだろうか? と想像力を働かせて、関心の幅を広げることで、相手の表情、態度、言葉の微妙なニュアンスなど、あらゆる情報を見逃さないで捕まえられるようになるだろう? 同じように、自分の願う状態を具体的にイメージすると、それを実現させるためには何が必要か、今の自分には何が足りないかが自然と見えてくるようになるんだ。意識すればするほど情報が集まり、それに向けて行動するようになるから、願いが実現する確率がアップする。これが引き寄せの法則の正体だよ。想像力を膨らませると関心の幅が広くなり、自分に有用な情報が集まってくる。情報のアンテナが高くなるというのが、想像力の1つ目の利点だね。ここまでいいかな?」

3匹は深くうなずいた。

「2つ目の利点は、準備ができるようになること。これは当たり前だよね。先に起こることを想像しておけば、こういう場面が来たらこうしようと事前に準備をしておくことができる

「僕は趣味でチェスをやるんですけど、だいたい5手先ぐらいまで読んでます。それを最善手、次善手、次次善と3パターンぐらいで考えるので、全部で15手ぐらいは読みます。でも、コンピュータは1秒間に2億手を読むそうです」

「そうだね、先を読むというのは、生きていく上で大事な力だし、予測にコンピュータを使うというのも有効なスキルだ。ただ、強運力の講義でも言ったけど、限界もあるから気を付けてね。例えばこんな想像をしてみてごらん。君たちは渡り鳥で、大きな湖に住んでいる。君たちの他にも数万羽の渡り鳥がいる。季節は秋で、越冬のためにそろそろ南へ向かおうとしている。渡り鳥はなぜ集団で移動するのかというとね、それが安全だからなんだ。迷子になる可能性も減るし、天敵に襲われる可能性も低くなる。ただね、渡り鳥の集団が飛び立つ瞬間は、誰にも分からない。自分だけが早く飛び立ち過ぎると、みんながついて来てくれなくて、迷子になってしまうかもしれないし、ボーッとしていたら集団に置いていかれてしまう。みんなと一緒に飛び立つのが大切なんだけど、その瞬間がいつなのかは分からない。だから、想像力を働かせて、次に何が起こるか、その場面が来たら自分はどう行動するか、ということを準備しておくのが重要さ。事前に準備をしておけば、その時が来た時にスムーズに飛び立つことができる。想像力を働かせることで身に迫る危険を回避できることもあるよ。さっきも言ったろう? 想像力は、自分の見えないところを映し出せる、もう1台のテレビカメラだって。後ろから、ケビンがいたずらを仕掛けてるかもしれないと想像しておけば、びっくりしないで済むかもね。ただ、その裏をかくのが僕の想像力なんだけれども」

ケビンは高笑いをしながら言った。やっぱり今日のケビンは普段とちょっと違う感じがする。上機嫌というよりは、徹夜明けのハイな状態という感じだ。確かに最近忙しそうだったけど、あんまり寝てないのかしら。