9.1 しあわせはいつもじぶんのこころがきめる

12月に入ってから、街全体が一気にクリスマスムードに包まれ出した。方々でクリスマスツリーが飾られ、お店からはクリスマスソングが聞こえてくる。立ち並ぶ家々は、鮮やかさを競うようにイルミネーションを施している。

ショッピングモールに入ると、入ってすぐのホールに巨大なクリスマスツリーが飾られ、道行く猫達が並んで写真を撮っていた。説明書きによると、ツリーの高さは15メートル、飾られている電球やオーナメントは1万個以上にもなるらしい。あまりのスケールにワタシも圧倒されていた。

いよいよ猫沢大学の卒業も間近に迫ってきた。12月10日に最後の講義が行われ、12月24日のクリスマスイブには卒業式だ。卒業式は、入学式の時と同じようにラグドールキャンパスの大ホールで行われる。卒業生は、誇らしげにガウンを着て帽子を被り、無事の卒業をお互いに祝う。学長からは、1匹づつに対して卒業証書ホルダーが手渡され、卒業生はそれを持ち、キャンパスのあちらこちらで記念撮影をする。

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……ところがだ。その卒業証書ホルダーには、実は卒業証書は入っていない。全体の卒業式とは別に、学部ごとに卒業証書の授与が行われる。

渋さんの意向で、ニャンコ科学部の卒業証書授与は、ニューイヤーパーティーを兼ねて行われることとなった。12月31日の夜にストレイキャッツハウスに集合し、新年のカウントダウンを行ってから卒業証書を授与するとのことだ。卒業の前には、レポートを提出する必要があるらしいが、さすがに落第ってことはないだろう。

自分が幸せに感じることをやりなさい

昨晩、メールで送られてきた最後の事前課題は、呆気に取られるほどシンプルなものだった。メールを受け取ってからしばらくの間、自分が幸せに感じることを考えてみたが、30秒も経たずにひらめいた。それは、25アイスのクッキー&クリームを食べること。

そんなわけで今日は、最後の事前課題をこなすためにショッピングモールに来ている。気温は5度近くまで冷え込んでいるのだが、真のアイス好きは寒い時だってアイスを食べるのだ。まあそれに、屋内は暖房が利いているしね。ワタシはアイスを頬張りながら全身に幸せを感じていた。

ケビンの家を訪問した後、ケビンからは「バースデーカードありがとう」と簡単なメッセージがあった。「元気ですか?」と応えると、「うん、大丈夫」とだけ返信があった。もっといろいろと詳しい話を聞きたかったが、今は試行錯誤の時期かもしれないので、それ以上の質問はせずに、いいねを表す顔文字を送信して会話を終わらせた。

ワタシの卒業後については、あれから何も進展がない。渋さんやサラに仕事を紹介してもらうことも考えたが、自分の力でなんとかしたいという気持ちがあった。自分のやりたいことが何なのか、もう少し落ち着いて考えたいという思いも残っていた。

フードコートには小さな仔猫が3匹いて、お互いにじゃれ合って遊んでいる。アイスを食べながら、その仔猫を眺めながら思った。

(幸せってなんだろうか…………)

もし、好きなことを仕事にできたら、それは幸せなのか……。でも好きなことも、仕事として義務になってしまうと、それはそれで辛くなる気がする。では、猫缶をたくさん持っていたら幸せなのか……。いや、使い切れない猫缶をたくさん持っていたところで、幸せには繋がらないだろう。

フードコートで遊んでいる仔猫を眺めながら、幸せとは何かというテーマについて思いを馳せていた。何となく、どこかで見たような光景に思えたが、それが何なのかは全く思い出せなかった。

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